2015年 01月 31日
カステルヴェトラーノで粉挽き屋さん見学
今回訪問したのは粉挽き屋さん。そう、黒パンの秘密はまずは粉にありき、、、だから。
ここの粉挽き屋さんでは800年代末から使われているという製粉機を使っていました。
ここが実際に粉を挽く部分。
この石はフランスのFERTE(フェルテ)という土地の石らしく。
なぜこの石、、、?Tumminiaは硬い硬質小麦。
柔らかい石だと消耗してしまって長く使えないそうです。
その点FERTEの石は硬いので、長い年月、粉を挽き続ける事が可能だそうです。
長く使用可能なことも重要ですが、最大の理由は別にあり。
この石で挽いたときと、最新式の機械で挽いたときの粉の香りや色が違うのだとか。
昔の石で挽いたほうが若干色は黒く残り、そしてさらに香り高くなるそうです。
だからこの石にずっとこだわってきたとか。
この日、案内してくれたのは3代目のFilippoさん。
古い製法へのこだわりも強いですが、新しい技術への挑戦も必要とFilippoさん。
Tumminia以外の硬質小麦は最新マシーンにて挽くそうです。なぜなら全粒粉でない粉にするには最新のマシーンの方が精度の高い粉になるから。シチリアではRimacinata(リマチナータ)と呼ばれている硬質小麦の粉ですが、これは麦の外皮などは取り除かねばなりません。そして細かくサラサラの粉なければなりません。そのためにはやはり新しい技術を取り入れたそうが良いそうです。
2階には粉を袋に詰める設備があります。
一袋一袋手作業で詰めていました。
「ここで働くのは僕と奥さん、そして妹、それにあと3人の従業員だけ。だから粉を挽く以外のことは全部手作業さ。」
大きな工場にもみえるこの粉挽き屋さんですが、実際には手作業の部分もかなり多く残っていました。
日本でもお菓子や料理を作る仕事をしていましたが、「粉の鮮度」について考え始めたのはイタリアに着てから。
日本では「挽き立ての粉」なんてなかなか手に入りませんが、
シチリアには小さな粉挽き屋さんがまだまだ残っていて、
はかなり鮮度の良い粉を手に入れることができます。
この粉挽き屋さんにも私が見学している途中、地元の人や、地元のパン屋さんが
ひっきりなしに粉を買いにやってきていました。
これは直営のパン屋さんで販売している黒パン。
外観からもちょっと黒っぽいのがお分かりかと思いますが、中もかなり黒く。(というか茶色ですが)
切ってみると粉のとっても良い香りが漂ってきます。
食べてみると、ふんわ~りと鼻に抜ける粉と、焼いたときの薪の香り。
そしてモチモチの食感。
一度食べるとかなり病みつきになります。
3代目オーナーのFilippoさんに将来の夢を聞いてみると、、、
「今は2台しか設置していない昔の粉挽き機、実は全部で8台あってね。
将来はこの8台を全部稼動させたいんだよ。
それも街の中じゃなくて、麦が実際に植わっている自然環境の中でね。
そこで美味しい粉を挽いて、カステルヴェトラーノの伝統を絶やさないよう、
代々この麦と粉とパンの伝統を伝えていきたい、
そして世界に向けてシチリアの素晴らしさを発信していきたい、それが今の夢かな。」
2つ前のエントリーでシチリアが都市化していること、モダン化が進んでいることを書きました。
でもその一方で、こうして伝統を守ろうとしている若者がいることに、ちょっと安心感を覚えた1日でした。
そして料理に携わるものとして、やはりその原材料のことを深く知ることの大切さも感じました。
ラ ターボラ シチリアーナでは、パン作り体験もできる粉挽き屋さん見学を企画中です。
ホームページに掲載するのはまだ少し先となりそうですが、
ご興味のあるかたラ ターボラ シチリアーナのお問い合わせフォームよりご連絡下さい。
シチリアの伝統を見て、触って、感じて、、、一緒に学びましょう!