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カステルヴェトラーノで粉挽き屋さん見学

電車に乗って向かった先はカステルヴェトラーノという街。ここはTumminia(トゥンミニア)という古代小麦の全粒粉を使ったPane Nero(黒パン)で知られる街。カステルヴェトラーノはトラーパニ県の中にはありますが、ここトラーパニではほとんど見かけない黒パンの秘密を探りに行ってきました。

今回訪問したのは粉挽き屋さん。そう、黒パンの秘密はまずは粉にありき、、、だから。

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ここの粉挽き屋さんでは800年代末から使われているという製粉機を使っていました。

ここが実際に粉を挽く部分。

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この石はフランスのFERTE(フェルテ)という土地の石らしく。
なぜこの石、、、?Tumminiaは硬い硬質小麦。
柔らかい石だと消耗してしまって長く使えないそうです。
その点FERTEの石は硬いので、長い年月、粉を挽き続ける事が可能だそうです。

長く使用可能なことも重要ですが、最大の理由は別にあり。

この石で挽いたときと、最新式の機械で挽いたときの粉の香りや色が違うのだとか。
昔の石で挽いたほうが若干色は黒く残り、そしてさらに香り高くなるそうです。
だからこの石にずっとこだわってきたとか。

この日、案内してくれたのは3代目のFilippoさん。

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古い製法へのこだわりも強いですが、新しい技術への挑戦も必要とFilippoさん。

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Tumminia以外の硬質小麦は最新マシーンにて挽くそうです。なぜなら全粒粉でない粉にするには最新のマシーンの方が精度の高い粉になるから。シチリアではRimacinata(リマチナータ)と呼ばれている硬質小麦の粉ですが、これは麦の外皮などは取り除かねばなりません。そして細かくサラサラの粉なければなりません。そのためにはやはり新しい技術を取り入れたそうが良いそうです。

2階には粉を袋に詰める設備があります。

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一袋一袋手作業で詰めていました。

「ここで働くのは僕と奥さん、そして妹、それにあと3人の従業員だけ。だから粉を挽く以外のことは全部手作業さ。」

大きな工場にもみえるこの粉挽き屋さんですが、実際には手作業の部分もかなり多く残っていました。

日本でもお菓子や料理を作る仕事をしていましたが、「粉の鮮度」について考え始めたのはイタリアに着てから。
日本では「挽き立ての粉」なんてなかなか手に入りませんが、
シチリアには小さな粉挽き屋さんがまだまだ残っていて、
はかなり鮮度の良い粉を手に入れることができます。
この粉挽き屋さんにも私が見学している途中、地元の人や、地元のパン屋さんが
ひっきりなしに粉を買いにやってきていました。

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これは直営のパン屋さんで販売している黒パン。
外観からもちょっと黒っぽいのがお分かりかと思いますが、中もかなり黒く。(というか茶色ですが)
切ってみると粉のとっても良い香りが漂ってきます。
食べてみると、ふんわ~りと鼻に抜ける粉と、焼いたときの薪の香り。
そしてモチモチの食感。
一度食べるとかなり病みつきになります。

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3代目オーナーのFilippoさんに将来の夢を聞いてみると、、、

「今は2台しか設置していない昔の粉挽き機、実は全部で8台あってね。
将来はこの8台を全部稼動させたいんだよ。
それも街の中じゃなくて、麦が実際に植わっている自然環境の中でね。
そこで美味しい粉を挽いて、カステルヴェトラーノの伝統を絶やさないよう、
代々この麦と粉とパンの伝統を伝えていきたい、
そして世界に向けてシチリアの素晴らしさを発信していきたい、それが今の夢かな。」

2つ前のエントリーでシチリアが都市化していること、モダン化が進んでいることを書きました。
でもその一方で、こうして伝統を守ろうとしている若者がいることに、ちょっと安心感を覚えた1日でした。
そして料理に携わるものとして、やはりその原材料のことを深く知ることの大切さも感じました。

ラ ターボラ シチリアーナでは、パン作り体験もできる粉挽き屋さん見学を企画中です。
ホームページに掲載するのはまだ少し先となりそうですが、
ご興味のあるかたラ ターボラ シチリアーナのお問い合わせフォームよりご連絡下さい。
シチリアの伝統を見て、触って、感じて、、、一緒に学びましょう!
by latavolasiciliana | 2015-01-31 19:05 | シチリアのオイシイ食材 | Comments(0)

イタリアの南に浮かぶ島・シチリア島の西の端っこトラーパニ在住の料理家。シチリアのおうちごはん、お菓子、海、家庭菜園、オリーブ、四季のお花、そしてニャンコ。シチリア美食の旅をコーディネートする「ラ ターボラ シチリアーナ」を運営しています。


by latavolasiciliana
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